ベトナムにおける商標の使用

1. 「ベトナムにおける商標の使用」の定義

知的財産法によれば、ベトナムにおける商標の使用とは、以下の行為を行うことをいいます。

a/ 保護される商標を、商品、商品の包装、営業用手段、役務提供手段、取引書類その他事業活動における取引関連文書に付すること。
b/ 保護される商標を付した商品を流通させ、販売の申出をし、販売のために広告し、又は販売のために保管すること。
c/ 保護される商標を付した商品又は役務を輸入すること。


2. ベトナムにおいて商標を有効に保護する方法

・ベトナムにおいて商標を適切に使用することによる保護

パリ条約第5条C(2)によれば、権利者による商標の使用が、同盟国のいずれかで登録された態様における商標の識別力を変更しない範囲で、要素の一部が異なる形態で行われたとしても、当該登録の無効をもたらさず、また当該商標に付与された保護を減殺しないものとされています。ベトナムにおいて、登録商標が文字と図形(シンボル)から構成されるにもかかわらず、権利者が文字部分のみ又は図形部分のみを独立した商標として使用する場合、それが「ベトナムにおける適切な商標使用」に該当するか否かは、当該使用が登録商標の識別力を変更するか否かにより判断されます。ただし、実務上は、ベトナムの商標当局が当該点を厳格に審査するため、登録された態様のとおり商標を使用することが推奨されます。

・以下の場合に、ベトナムにおける商標使用の証拠を提示すること

– 第三者による不使用取消し(Cancellation on basis of non-use)
ベトナムにおける商標は、正当な理由なく、権利者又は登録された被許諾者により、取消請求の直前5年間連続して使用されていない場合、登録が無効とされます。ただし、取消請求の少なくとも3か月前までにベトナムにおける商標使用が開始又は再開された場合はこの限りではありません。

– ベトナムにおける商標使用を通じた識別力の立証
以下の資料等が考慮され得ます。

  • 商標の由来、沿革、および継続使用期間に関する説明
  • 商標が登録されている国の数、又は著名商標として認知されている国の数
  • 当該商標を付した商品・役務の一覧
  • 商標が流通している地域、販売商品又は提供役務から得た売上高
  • 当該商標を付した商品・役務の製造数量又は販売数量
  • 商標の財産的価値、商標の譲渡又はライセンスの対価、商標を現物出資とする投下資本の価値
  • 広告宣伝およびマーケティングに対する投資および費用(国内外の展示会への参加費用を含む)
  • 侵害、紛争、および裁判所又は権限ある機関の決定・裁定
  • 販売、購入、使用、広告宣伝およびマーケティングを通じて商標を認知している消費者数に関する調査結果
  • 国内外の組織又はマスメディアによる商標の評判に関する格付けおよび評価
  • 商標に対して授与された賞およびメダル
  • 知的財産鑑定機関による審査結果

3. ベトナムにおける並行輸入

並行輸入(いわゆるグレーマーケット品)とは、当該市場における商標権者の同意なく、ブランド商品が当該市場に輸入され販売されることをいいます。これらの商品は、ブランド権利者により又はそのために、あるいは権利者からライセンスを受けて製造された「真正品」であり(模倣品とは異なります)、特定の法域向けに処方・仕様又は包装がされていたものが、ブランド権利者の意図した市場とは異なる法域へ輸入される場合があります。

ベトナムでは、並行輸入は一般に認められています(知的財産法第20条および第125条第2項)。一方で、ベトナムの並行輸入に関する法制度は、知的財産権によって保護された輸入品への適切なアクセスを確保する上で機能し得ます。並行取引の規制は、特に医薬品および農薬関連製品に関して、国内消費者および流通業者の利益の調整を伴います。ただし、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への加盟予定国として、ベトナムは、ベトナム国内の商標権者の同意がない場合の並行輸入を制限する方向で規定を整備する可能性があります。