ベトナムにおける知的財産権(IPR)行政取締手続

管轄当局

  • 科学技術監察機関(科学技術省監察局およびベトナム各省に所在する科学技術局の監察部門を含む)
  • 市場管理局
  • 税関当局
  • 警察機関

ベトナムにおける行政手続による知的財産権侵害処理のフローチャートは以下のとおりです。


ベトナムにおける知的財産権の行政的権利行使手続

手続

一般に、商標に基づく権利行使の実務において、ベトナムの権限ある執行当局は検査チーム(Inspection Team)を編成し、侵害被疑者に対する立入検査(摘発)時の安全確保のため、当事務所の担当者の立会いを求め、かつ、地元警察の参加を要請することがあります。侵害被疑者の店舗/工場/倉庫等を立入検査し、侵害品を発見・押収します。行政違反調書(Minutes of administrative violation)は直ちに作成され得ますが、必要に応じ、後日の会合・協議のためにまず作業記録(Working Minutes)を作成し、その後に行政違反調書を作成し、制裁決定を科すこともあります。

基本手続

(i) 申立書の提出

権利者/知的財産代理人が、知的財産権侵害の処理を求める申立書を、ベトナムの権限ある執行当局に提出します。

(ii) 確認

執行当局は、(i) 申立書および (ii) 申立書に添付された証拠を確認します。必要書類又は証拠が不足している場合、権利者/代理人は30日以内に追加提出を求められます。

(iii) 受理/不受理

要件がすべて満たされている場合、執行当局は10日以内に検査決定(Decision on Inspection)を発行します。権利者/代理人は、執行当局が認める場合、侵害処理過程に参加し、立会い・見分を行うことができます(政令99/2013/ND-CP第26条第7項)。
申立書に必要書類/証拠が欠ける場合、執行当局は追加証拠/説明を求めます(政令105/2006/ND-CP第27条第3項)。必要書類/証拠を提出できない場合、当局は事件処理を拒否します(政令105/2006/ND-CP第27条第4項)。

執行当局は、他の執行当局に対し協力要請を行うことができます(政令99/2013/ND-CP第29条)。
申立てが提出先当局の管轄外(他当局の管轄)である場合、申立てを受領した当局は、申立人に対して適切な提出先当局を案内するか、又は管轄当局に申立書を送付します(政令105/2006/ND-CP第27条第2項および政令99/2013/ND-CP第25条第1項(b))。
申立てが受理された後に、登録権又は所有権に関する紛争・申立て(例:取消/無効手続)が生じた場合、執行当局は、次のいずれかの対応を取ることができます。(i) 当事者に対し、知的財産法制に基づく権限ある機関において、苦情、告発又は紛争の解決手続を行うよう求めること。(ii) 産業財産権者に対し説明又は誓約を求め、又は産業財産を所管する国家管理機関に対し、当該苦情・告発・紛争の対象となる産業財産権の法的状態の明確化を求めること(政令99/2013/ND-CP第27条)。
権利者は、地理的表示(GI)侵害に関する鑑定結論を求めることができます(政令105/2006/ND-CP第40条第2項)。執行当局は、知的財産鑑定機関/専門家に意見を求めることがあります(同第40条第1項)。
侵害行為に犯罪の兆候が含まれる場合、執行当局は、捜査および刑事訴追開始のため、事件を刑事手続機関に移送しなければなりません(行政違反処理法15/2012/QH13第62条)。

(iv) 立入検査(摘発)

立入検査(摘発)は、検査決定日から15日以内に実施されます(検査法56/2010/QH12第44条第2項;政令81/2011/ND-CP第26条第1項)。検査/摘発により行政違反が認められた場合、侵害調書(Minute of infringement)が作成されます。侵害調書に基づき、検査チーム長は裁量により、暫定差押決定に基づき侵害被疑品を差し押さえ、暫定差押調書を作成するか、又は封印決定に基づき侵害被疑品を封印し、侵害被疑者に封印品の保全を命じ、封印調書を作成して、権限者の決定を待つことができます。

(v) 制裁決定の発行

執行当局は、侵害調書作成日から7日以内に、侵害者に対する制裁決定を発行します(行政違反処理法15/2012/QH13第66条)。制裁決定には、警告又は金銭罰が明示されます。なお、行政違反に対する金銭罰は、侵害主体(法人)については5億VND(約21,500米ドル)を上限とします。

また、侵害の性質および重大性に応じ、追加制裁および救済措置が適用され得ます。例えば、行政違反の証拠物及び手段の没収、侵害品又は侵害役務の製造・取引・提供の停止(制裁決定の効力発生日から1~3か月)、侵害品の廃棄、商品からの侵害標章の除去、行政違反により得た不当利得の強制納付、又は既に売却・散逸・廃棄された証拠物/違反手段の価値に相当する金額の強制納付等が含まれます(政令99/2013/ND-CP第3条)。

(vi) 制裁決定の履行

侵害者は、制裁決定日から10日以内に、当該制裁決定を履行しなければなりません(行政違反処理法15/2012/QH13第73条)。

侵害者が任意に履行しない場合、制裁決定の強制執行が適用されます(行政違反処理法15/2012/QH13第86条)。

(vii) 制裁決定に対する不服申立て又は行政訴訟の提起

侵害者は、(i) 制裁決定に対する不服申立て(第1回)を行うか、又は (ii) 裁判所に行政訴訟を提起することができます(苦情処理法02/2011/QH13第7条第1項)。

制裁決定に対する不服申立て(第1回)について、当該不服申立ての処理決定に不服がある場合、侵害者は、(i) 上級機関に対する不服申立て(第2回)を行うか、又は (ii) 第1回不服申立ての処理決定に対する行政訴訟を裁判所に提起することができます(苦情処理法02/2011/QH13第7条第1項)。

行政訴訟を提起した場合(第一審裁判所)、第一審判決に不服があるときは、上訴手続により上訴することができます(2015年民事訴訟法第273条第1項)。